金沢の坂が別世界への入り口に
金沢の街には、まるで別世界への入り口のような不思議な坂が存在する。その代表的なものが、「ひよどり越え」と呼ばれる坂だ。
この坂は、尾張町から主計町の茶屋街に下りる狭い石段で、木々に覆われて昼間でも薄暗い雰囲気がある。この坂を抜けて、主計町や東山の茶屋に人目を忍んで通った旦那衆たちの姿が「ひよどり越え」と呼ばれている。
この名称は、源義経の騎馬隊が一ノ谷の戦いで急斜面を駆け下りて平氏を破った戦いぶりを表した言葉に由来する。旦那衆たちが、この坂を抜けて茶屋街に向かう様子を、まるで義経の勇敢な戦いぶりになぞらえたのだという。
日常の世界から離れて、別世界の茶屋街へと向かう彼らにとって、この坂は非日常への入り口だったのかもしれない。坂を上り下りする際の緊張感や、周囲の景色が一変する感覚は、まさに別世界への扉を開くような体験だったのではないだろうか。
金沢にはこの「ひよどり越え」以外にも、別世界につながる坂があると言われている。その一つが「あめや坂」だ。
この坂は、卯辰山山麓にある光覚寺に上る坂で、かつてこの界隈には飴屋が多数存在していたことから、その名がついたと言われている。ある飴屋に、夜な夜な飴を買いに来る女性がいたという不思議な話が伝わっている。
その女性が飴屋の店主に後をつけられると、光覚寺の墓地で姿を消してしまったという。そして、その瞬間に墓場から赤ん坊の泣き声が聞こえたというのだ。掘り起こしてみると、飴を買いに来た女性の亡骸と元気な赤ちゃんが見つかったという。
この話は金沢だけでなく、全国各地で似たような伝説が語り継がれている。しかし、この飴買い幽霊の話の舞台となるのが坂の上にある飴屋という点が、坂が別世界への入り口だという想像を掻き立てる。
金沢の坂には、まるで別世界への扉を開くかのような不思議な雰囲気が漂っている。坂を上り下りする際に感じる緊張感や、視界が一変する感覚は、まさに別の世界に足を踏み入れるような体験だ。
この不思議な坂を歩くことで、私たちは現実世界から一時的に離れ、別世界への扉を開くことができるのかもしれない。金沢の坂を訪れ、その不思議な雰囲気に浸ることで、私たちは日常から解き放たれ、新たな発見や体験ができるかもしれない。
坂の見どころと歴史を巡る
金沢の坂には、それぞれ興味深い歴史や見どころがある。まず、「ひよどり越え」の坂では、狭い石段を下りていく際の緊張感や、木々に覆われた薄暗い雰囲気を体験できる。そして、この坂を抜けて茶屋街に向かった旦那衆たちの姿を想像することで、当時の金沢の情景を感じ取ることができるだろう。
一方の「あめや坂」では、光覚寺への参道を歩くことで、別世界への入り口を感じられるはずだ。そして、飴買い幽霊の伝説に触れることで、この坂が持つ神秘的な雰囲気を味わえるはずだ。
さらに、金沢の文豪・泉鏡花ゆかりの「千杵坂」では、小説『照葉狂言』に描かれた情景を追体験できる。実際に35段の石段を登り切り、日暮ヶ丘に立つと、浅野川沿いの景色が広がり、金沢城も見渡せる。この視界の変化に、鏡花の描いた不思議な錯覚を感じ取れるはずだ。
このように、金沢の坂には、それぞれ特徴的な歴史や見どころが隠されている。坂を歩きながら、その歴史や伝説に触れることで、金沢の街の魅力をより深く感じ取れるはずだ。
おすすめのコース
金沢の坂を巡るおすすめのコースは以下のようなものが考えられる。
まず、「ひよどり越え」の坂から始めるのがよいだろう。尾張町から主計町へと下る狭い石段を歩き、旦那衆たちの姿を想像しながら、別世界への扉を開くような体験をする。
次に、「あめや坂」へと移動する。光覚寺への参道を登りながら、飴買い幽霊の伝説に思いを馳せる。この坂を登り切ると、まるで別世界に足を踏み入れたような不思議な感覚に包まれるはずだ。
そして最後に、「千杵坂」を訪れる。35段の石段を登り切り、日暮ヶ丘に立つと、浅野川沿いの景色が一望できる。この視界の変化に、泉鏡花の描いた不思議な錯覚を感じ取ることができるだろう。
このように、金沢の代表的な3つの坂を巡ることで、それぞれの歴史や見どころを体験し、まるで別世界に足を踏み入れたような不思議な感覚を味わえるはずだ。
金沢の坂を歩くことで、私たちは現実世界から一時的に解き放たれ、新たな発見や体験ができるかもしれない。金沢の坂を巡る旅に出かけ、その不思議な魅力に触れてみてはいかがだろうか。
